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港の日本娘のENDOのレビュー・感想・評価

港の日本娘(1933年製作の映画)
4.0
1930年代前半の横濱(ハマ)で繰り広げられる恋の鞘当。砂子(及川道子)がシェリダン燿子(澤蘭子)をピストルで撃つカットを3分割して寄っていくショットは身を窶した燿子が砂子を見つめ返す事で逆転する。砂子は殺人未遂事件の報道から逃げるように神戸に渡りチャブ屋を生業にするも故郷を懐かしみ横濱に舞い戻る。"Nile Bar”におけるマスミ(逢初夢子)のモダンな衣装と和装の砂子の対比が戦前の日本の折衷文化を感じさせる。無国籍な魅力に溢れつつ死人のように画面内で消失していく人々の時間経過の演出が不気味。家に砂子を招待するドラ(井上雪子)が夕飯の支度の最中ふと振り返ると転がる毛糸玉が見える。その細い糸を辿っていくと砂子と旦那のヘンリー(江川宇礼雄)が昔のように仲睦まじく踊る足元に絡みついているのがわかる。再び家を訪れた砂子は毛糸で編まれた小さな靴下を見つけ雪子の妊娠を知る。毛糸は混沌と秩序の指標となる。
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