もものけ

独立愚連隊西へのもものけのネタバレレビュー・内容・結末

独立愚連隊西へ(1960年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

たった旗のために、死にものぐるいなのよねぇ〜……。

日中戦争さなかの北支戦線で、八路軍の攻撃により聯隊が消息を絶ち、聯隊旗回収に送った部隊も帰らず、焦る北支方面軍。
一方、壊滅したと戦士広報に誤って載ってしまい、国にも戻れずに各地の戦線を彷徨う独立愚連隊は、軍機違反として北支方面軍に拘束される。
持ち前の強運で逃げ出すも、聯隊旗奪還作戦へ任命され、八路軍の真っ只中へと向かうのだった…。


感想。
「日本のいちばん長い日」
「血と砂」
などの巨匠 岡本喜八監督のシリーズ作品です。

前作の続編ではなく、オリジナルストーリーですが登場人物が一緒という、アメリカ映画のような設定でおくる、娯楽戦争活劇。

この作品は、邦画にある敗戦国としての気遣いだらけで、時代考証もおかしく、妙なしがらみや泣かせようとだけする駄作の多い現代の作品とは違い、中国などに余計な飾り気を出さずに自然なままに描いていて、とてもわかりやすく描いております。

しかし、終始コメディチックに描いていますが、現代から見るとボロボロの旗としてすら使えない聯隊旗を回収する為に、数多くの兵士が死んでいく様を見せつけられ疑問に感じてしまいます。
聯隊旗は、皇軍にとって天皇陛下から与えられた"天皇陛下の分身"ともいえる大切な物であり、神聖な意味づけがなされており、兵士の命の重さよりも遥かに尊きものであります。
とはいっても"ただの旗"。
糧食配給や装備が不足気味の日本軍にとっては、食い扶持の足しにもならないそんなものへ、無謀ともいえる回収作戦へ兵士を無駄に送り出す点を皮肉たっぷりに描いているのをみると、作品の根底には反戦や体制批判、軍批判などがメッセージとして描かれているところが面白いです。

これは、愚連隊の左文字少尉の兵士への統率にも表れています。
皇軍は、敗走などなく、聯隊旗が奪われようものなら、自害して果てる考えが通例な中、左文字少尉は部下を仲間として、命を守り生き残るという信念で行動しており、皇軍からするとはみ出し者として作品では"愚連隊"と付けている点がなるほどと唸ります。
この左文字少尉がまたカッコいい!

そして、おバカでありながらもカッコよく見える愚連隊のメンツ達の生き生きとしているキャラが、憎めません(笑)

更に、これも現代の邦画で多い演技の大袈裟だけで、軍人らしくない立ち回りとは違い、上官への敬礼報告時などでの姿勢の正し方や声のハリなど、不自然ではないリアルさなんかも素晴らしいです。

これは敵である八路軍への互いに敬意を評するシーンなどにも表れて、殺し合いの相手にも同じ軍人として、人として接したであろう当時の軍人達を美しく表現しているシーンであると思います。

なかなかに、戦闘シーンも爆破の迫力があり、当時の邦画作品が造りのこだわりを伺えます。
現代の作品は、カメラばかり綺麗ですがフイルム質感がなく、テレビドラマの延長線にしか見えず、カット割りも平凡であるので、当時の邦画作品は芸術的にも素晴らしい時代だったと個人的には思います。

大映、日活などの邦画黄金期時代の素晴らしい作品に、4点を付けさせていただきました!
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