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あつい壁のmonoのレビュー・感想・評価

あつい壁(1970年製作の映画)
4.3
映画としては、自主映画なので限界があったんではないか。と想像したりもするけど、全く素晴らしい映画でした。
地元の人たちが多く出演してたみたいだけど、どれがそれか分からない。
子どもたちに人形劇を見せるシーンとか、監督が上手く"本物"を切り取ったんだろうな。と思えるシーンがたくさんで。
特に主演の信次役の男の子が素晴らしかったー涙!!!彼、ほんとに地元の子なのかな。



ライ病=ハンセン病。
ハンセン病患者の隔離が法律で決まったのは明治40年。その頃ハンセン病患者の多くは物乞いをして暮らしてたようで、外国人の目に留まることを国辱としてこの法律ができたらしい。そして…断種。
国をあげてここまでの差別と偏見が強まっている中で、戦後、特効薬により治癒する病気となった後も、全く差別が無くならなかったのはもはや至極当たり前の道のように思う。
ハンセン病を引き起こすのは「らい菌」という細菌で、発症すると皮膚や末梢神経が侵され、病状が進むと顔や手足が崩れるなど後遺症が残ることもある。
それらの後遺症の見た目の恐ろしさが、人々の恐怖を煽ったんでしょう。
実際の感染力は弱く、普通の生活をしていたらまずうつらない、乳児以外はほぼ感染しない病気だったらしいけど
みんな"万が一"が怖い。
医者にいくら大丈夫だ、と言われても、しっかりとした情報が入ってきても。
親がハンセン病なら、子どもも
感染している"かもしれない"。
その子から、自分の子どもに
感染する"かもしれない"。
映画の中で親たちは、すごく怖がっていました。
何が1番怖いって、その気持ちが私にも分かってしまったから。
あの状況で、全く不安に思わない親は…
確かに、あまりいないと思う。それが普通だと思う。
それくらい、国やメディアが恐怖心を煽っていたんじゃないかな。
エボラ熱で考えてみると近い気がする。
エボラはもう治る病気だよ〜って、いくら医者に言われても
今エボラに感染した人が近くにいたら、多分かなり差別されると思う。
国が一度ここまで恐怖心を煽った病気は、その後国がいくら訂正しても、ましてや一介の町医者が感染を否定する程度じゃ、人々の恐怖心は拭えないんですね。

差別をする親の気持ちが分かってしまい、それが自分で辛かった。
そして、それ以上に
全く感染していない子どもたちが、町中の大人たちから非難されるのを見るのは
かなり心が痛めつけられた。
自分も差別される。そして、感染している親についてはもっともっと酷い事を言われる。
しかも、会えない。一緒に暮らせない。
隔離されてる親も、かなりかなり辛いものがあるはず。
ハンセン病患者を患った人たち、その家族は
本当に地獄を味わっていたんじゃないでしょうか。

映画のラストがまた…辛かったです。
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