コーエン調としかいいようのないジャンルの特定が難しい映画だ。多分彼らの名前がクレジットされてなかったら観なかったと思う。
1930年代のアメリカ南部を舞台にした脱獄囚の珍道中。銀行強盗ジョージ・ネルソンに、ギタリストのトミー・ジョンソンは実在した人物で、いたるところにクラシカルなアメリカの記憶を散りばめている。特にトミー・ジョンソンの悪魔に魂を売ったエピソードは、ブルースファンにとっては有名な話だ。ぼくはロバート・ジョンソンの話として記憶していたけど、トミー・ジョンソンにも同様の逸話があることをこの映画で知った。
見る人がみれば、ギターを持ってクロスロードに立つ黒人のショットでこの逸話を思い起こすに違いない。
綿花畑やブルース、ほこりっぽい田舎道などアメリカ南部の象徴する風景のなかに登場する多彩なキャラクターたちがみんな一癖も二癖もあって飽きない。
全体のストーリーとしては地味だけど、だからこそ、ひとつひとつのキャラクターや細部が活きるようになっているし、クライマックスには個々のエピソードが集約されるので脚本としての完成度はめちゃめちゃ高い。
ただ映画に派手さを期待するひとにはウケない(ヒットしたらしいけど)と思う。