凛葉楓流

ゆきゆきて、神軍の凛葉楓流のレビュー・感想・評価

ゆきゆきて、神軍(1987年製作の映画)
3.8
ドキュメンタリー、なのか?というか後半は勝手に奥崎謙三が遺族を仕立て上げるフェイクドキュメンタリーだし。

奥崎謙三の電波っぽい家や車は確かに画になるけれど、肝心の戦争については視覚イメージが一切ないのにもかかわらず、恐ろしい。いや、人が語るからこそ恐ろしいというのもあるかもしれない。"黒豚"と"白豚"を食べたことは語るが、同志のことに対しては口を噤む老人たち。みんな「それは貴方の価値観で、私は私の考えがある」という言い方をする。
最後に訪れた老人が、典型的な日本人というか「当時は上からの命令で」「環境が」という言い訳をする。もちろん、そういうしか無いとは僕も思うのだが、その欺瞞を突く奥崎謙三の執念。

「目的のためには暴力を使います」とか言ってるし、というか信念とは関係なく人を殺した人なのだけど、この自然法的な発想というか、キリスト教的ともいえる倫理観の奥崎謙三はまるで黒澤明の映画の登場人物のよう。100人に1人くらいはこういう人も居なくちゃいけないんだろうと思う。

エンドロールの企画に今村昌平の名前があった。
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