ヴレア

鉄道員(ぽっぽや)のヴレアのレビュー・感想・評価

鉄道員(ぽっぽや)(1999年製作の映画)
4.3
「映画館が無くなったらどうなるの?」
「無くなるのさ。そこに映画館があったことさえ忘れ去られるのさ。」

閉館間近の映画館にて、クロージング作品として上映された本作を鑑賞。

高倉健演じる乙さんのぽっぽや(鉄道員)として生きる様がとても格好良く、仕事に対する誇りや使命感というものをその背中を通して体現されていてとても引き込まれた。

また、この作品は"喪失"の物語でもある。
どんな時も仕事を優先した事により、家族に対する負い目や喪失感を抱えていて、なんとも切ない思いが伝わって来た。
そして、鉄道が廃線になるというのも乙さんやその町に暮らす者にとって大きな喪失感をもたらす重要な出来事だ。

「鉄道が無くなったらどうなるの?」
と聞かれた乙さんが
「ただ無くなるのさ」
「あっという間に原野になる」
「鉄道があった事さえも忘れ去られるだろう」と苦渋の表情で語るシーンが印象的だった。

また広末涼子が登場するシーンの演出が凄いと思った。作品中でもそのシーンだけまるで別の空間に存在しているかのようなファンタジーさを感じさせる。もちろん彼女の存在感と可愛さ、オーラが凄まじいからこそだけど。これ以上無いキャスティングだなと思わせた。

そして、私もまた映画館が無くなる事に喪失感を覚え、やがてその気持ちが彼らの鉄道への思いとリンクして行き、さらに悲しくなってしまった。
今までありがとう。私はそこに映画館があった事をずっと忘れないよ。と映画館に伝えたい。

【9/19追記】
都合がついたので閉店するその日の最終上映で再び鑑賞。この作品が最後の上映回となった。
最後なのに予告編が流れるのは微笑ましかった。予告なかったら遅れて来た人見逃しちゃうからそこに配慮したのかな。
客の入りは半分より少ないくらいだったけど、観てる皆の集中力が凄かったと思った。物音一つ聞こえて来ないし。エンドロール後は自然と拍手が巻き起こりました👏
最後はスタッフの方が見送って下さいました。

映画館があった事はやがて忘れられるかもしれない。

でも、思い出が残るよ。

楽しかった思い出が。
ヴレア

ヴレア