真鍋新一

ルバング島の奇跡 陸軍中野学校の真鍋新一のレビュー・感想・評価

3.8
おそらく小野田少尉の事件があったのでタイトルに「ルパング島」とあるのだが、そのあたりの話はまったく出てこない。とはいえ、今まで観た佐藤純彌監督の作品でいちばん面白いかも。

戦時中に日本全体を包んでいた狂気がまったく意表を突くかたちで表現されていた。軍人も、民衆も、文字通り一丸となって戦争に邁進していたのだ。戦争映画では意外と(でもないか)無視されることの多い天皇の存在について、逃げずに真正面から踏み込んだセリフがあるのも見どころ。

千葉ちゃんはベストアクトの1本。いつもの派手なアクションではなく、スパイだけあって実用的なファイティングを見せているのも良い。夜道に紛れてワンカットでホイホイと屋根に登っていく驚異的な跳躍力。中島ゆたかとの激しいラブシーンには東映らしからぬ品を感じた。

元・日活の近藤宏の風格ある軍人ぶりや、まさかの小津組・三宅邦子の佇まいはこれまたイツメンだらけの東映作品とは一味違う雰囲気を出すのに貢献していた。
真鍋新一

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