半兵衛

ルバング島の奇跡 陸軍中野学校の半兵衛のレビュー・感想・評価

3.3
オールスターキャストの割に千葉真一のオーラが圧倒的すぎて他の面子が霞んでいるとか、同じ題材を扱っている『陸軍中野学校』に比べてアクションで押しまくっているとか、陸軍中野学校に来る面子がどう見ても現代人の髪型(映画では上官からの命令で髪を伸ばしているという設定に)だったりとか色々突っ込みたいところはあるかもしれない。

それでも監督がもっとも言いたかったことがつまっているラスト数分に心打たれる、若林豪の怒りに満ちた表情、彼の無念さを感じつつも表向きは何事もなく済まそうとする室田日出男(表情が絶妙)、殺害されアメリカ人に茶化されすぐさま処理される死体…。「お国のために死ね」と言っておきながら戦後すぐにアメリカに媚びを売りのうのうの生きる軍部の上の人間たち(実際問題自殺したやつはあまりいないと思う)への怒りがひしひしと伝わる。

あと菅原文太演じる中野学校の講師の台詞がいちいち決まっており、彼の元にいたら自分も影響を受けてしまいそうなカリスマ性を感じさせる。語る台詞の数々も戦争中とは思えない合理的なものばかりで、特に天皇論の場面は必見(多分テレビやネットでやったら抹殺されるはず)。でも調べたら実際中野学校でそういうことを教えられていたというのにびっくり。

若林豪が寝ているとき逃げ出そうとする部下の小さい足音を聞いて目を覚ますという描写があり、漫画チックだなあと思った人もいるかもしれない。けれど実際陸軍中野学校出身の小野田寛郎は寝ているときも誰かが横を通りすぎるとすぐさま目を覚まし周囲の人から気味悪がられたというエピソードがあり、そういう忍者みたいなスキルがないと生きていけない社会があることを感じさせる。

そしてなによりこういう作品を期間限定だけれど無料配信する東映が一番ヤバイ。
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