そのじつ

デビルズ・バックボーンのそのじつのネタバレレビュー・内容・結末

デビルズ・バックボーン(2001年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

「パンズ・ラビリンス」と姉妹作的位置づけだと聞いて観てみた。
時代背景も共通で、スペイン内戦下。(「パンズ・ラビリンス」は内戦の5年後)
とある孤児院に11〜12歳の男の子が送り届けられる所からお話は始まる。

この少年になんとなく「パンズ・ラビリンス」の主人公オフェリアの面影がチラつく。
黒目がちな瞳は鏡のように、現実世界の不安やいびつさを映している。
少年は実際の戦闘に巻き込まれたわけではないが、
親と離ればなれになり「もう会えないのでは?」という不安を抱きながら一分一秒を過ごす緊張感を背負っている。
それが具合の悪い母親を粗末に扱う強権的な義父の元で、母を失う不安に押しつぶされそうになりながら過ごすオフェリアとダブる。

この作品、おおざっぱにまとめると「幽霊譚」ということになると思う。
しかし幽霊で怖がる仕掛けはほぼ無いに等しい。
それよりも印象的だったのは、異常事態に陥った場所で、頼るべきものを全て失った子どもたちが、
自分達の命と、友人を襲った非道を正す事をかけて戦う姿。

子ども達が力を合わせて困難に立ち向かう筋書きだと聞いたら、爽やかな後味を予想するのだが、
全てをやりとげた後も、少年達に笑顔はない。
ただ果てのない無常感の前に投げ出されただけ。
それでも涙を忘れて歩き出す彼らの背中に連れられて、共に戦渦へ踏み込んでゆくしかない…という錯覚を抱かされる。
絶望と生を求める焦燥感と仲間を支えねばという責任感…ラストシーンは少年達に心がシンクロして苦しいほどだった。

叙情的な表現はおさえられ、淡々と積み重ねられるエピソードと画面。
リアルのようなファンタジーのような世界観。
現実の存在が醜悪すぎ、ファンタジーの存在が近しくなじみ深いものに思えてしまう。
それらが混沌と混じり合って、居心地悪く、時に心地よい不安を感じさせる。
いわゆる「後味が悪い」作品なのだろうが、不思議に不快ではない。
(コワい映画は得意じゃないのですが)

画面の色合い、特撮とCGのハマり具合、キャラクタ達があるがままでいるような存在感。
脚本で描かれなかったプロットが、この物語の前後に延々と存在しそうな。
これら画面作りの妙も、上記の世界観を補完している。
「パンズ・ラビリンス」でデル・トロ監督の絵作りの才能にすっかりハマったのだが、本作でもそれをしっかり味わうことが出来た。
そのじつ

そのじつ