シズヲ

マシンガン・パニックのシズヲのレビュー・感想・評価

マシンガン・パニック(1973年製作の映画)
3.2
マシンガンによる銃乱射事件の真相を追う70’s刑事モノ。確かに大虐殺だがそんなにパニックは起こらない。警官のウォルター・マッソーも殆ど笑わない。冒頭の乱射事件のシーンこそスリリングであるものの、それ以降は延々と淡白なトーンで進行していく。過剰なアクションも無ければ派手な演出も無い、草臥れた面持ちの警官達が地道に職務に当たるのみ。職業人としての警察官の佇まいがとにかく生々しい。ウォルター・マッソーの哀愁漂う表情はまさしく本作の空気感を象徴している。70年代サンフランシスコの自然な情景を捉えた撮影も印象深く、猥雑で混沌とした当時の街並みがありのままに映し出されている。本筋とは関係ないけど、黒人街で刑事二人が捜査している時の「警戒されている」「生き残るためさ」というやりとりはアメリカの構図としてさりげなくも印象的。

それなりの味はあるものの、全体としては流石にちょっと素っ気なさ過ぎる。作劇的で露骨なカタルシスを排除し、徹底してドライな雰囲気を貫いていること自体は良い。似たようなジャンルで言うと『フレンチ・コネクション』はヒリつくような緊張感を保っていたし、『センチュリアン』は警官という職務のやるせない悲哀を描いていた。本作はそういった“あと一歩”のエッジが足りなくて、ひたすら退屈で地味な捜査を見せつけられているだけの印象が強い。推理要素などで引っ張られるような内容でもないだけに尚更。ウォルター・マッソーとブルース・ダーンのバディ関係も終盤手前まで悪い意味で噛み合っていないので、見ていて好きになれる感じでもないのが辛い。
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