家族から離れてインドのチベット子供村に住む少年をメインに、中国政府の迫害をうけながらも、家族や信仰を大切にして生きるチベット族の人々を映した2012年のドキュメンタリーです。
たったひとりでインドに来たオロ君は、日本でいえばまだ小学生。止まらないおしゃべりと、子供らしい無邪気な笑顔が印象的な男の子でした。
だからこそ、国を出る時に警察に捕まり、刑務所に1か月も入れられた事を泣きながら語る姿に心が痛みます。
こうしたドキュメンタリーやルポルタージュに触れるたび、何でこうなってしまうのかといつも思います。
年をとればとるほど、無駄に記憶が蓄積され、理不尽かつ無慈悲に虐げられた人たちが、日本にも世界にも、たくさんいたこと、今でもいることに気づいて、途方に暮れる頻度が増えました。この世の不幸は果てしがない。
だから高齢になっても、チベット族の人たちのために、このような作品を撮る監督は純粋にすごいなと思います。
とはいえ、この作品自体はチベットの人たちの笑顔や、歌や、交流も映していて、暗い一方の内容ではありません。
むしろ、彼らが守ろうとする文化や彼ら自身を愛しげに見つめる視線で撮られていました。お婆ちゃんの手をオロ君が一生懸命に温める場面では涙が出ました。
人と人が出会って笑いあうこと、思いやりを持って触れること、そこには天国があります。この世の幸福も、本当は果てしがないものなのかもしれません。
オロ君一家が再び共に暮らせますように。