櫻イミト

リリオムの櫻イミトのレビュー・感想・評価

リリオム(1930年製作の映画)
3.5
当時欧米で人気を博していた同題戯曲(1909)の3度目の映画化。監督は「第七天国」(1927)で第1回アカデミー監督賞を受賞したフランク・ボーゼイギ。撮影技術”背景投影”を初めて用いた一本。

ラング監督版(1934)の物語の落としどころが腑に落ちなかったので比較してみようと鑑賞。

同作との大きな違いはジュリーが主役と前置きがあることと、ジュリーにプロポーズし続ける大工の存在。この二点によってプロットの方向が大きく変わる。ラング版は”リリオムがジュリーの愛で許される話”であり、本作は”ジュリーの愛がリリオムを許す話”である。どちらにしろ”暴力”への違和感はあるのだが、こちらのほうがまだ少ない印象が残った。

序盤のカーニバル、終盤のファンタジーともに映像に凝っていてラング版とは違ったな魅力があった。”背景投影”を使った列車の登場シーンは非常にうまく撮られていて驚くほど。”列車”自体にもシナリオの布石が打たれていて効果的だった。

本作とラング版を比較すると、一本の映画としては本作の方が好みだった。キャスティングもこちらのほうがテーマと合っていたと思う。
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