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ホーリー・マウンテンのordinalのネタバレレビュー・内容・結末

ホーリー・マウンテン(1973年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

映画が虚像であることを直接ネタバラシ的に鑑賞者に気づかせるパターンは珍しい。画面が虚構であることに気づくことは重要なことであるが作品として終盤までフィルムと鑑賞者の中に築かれてきた新たな世界観が崩れ去ってしまうという点ではその手法はタブーな気もする。しかしながら、崩れ去る世界であることが意識されているからこそ、このような暴力的と言えるまでの開放感と脱力感があくまでも宗教という枠組みの中で遠慮無く表現できるのかもしれない。序盤は斜に構えて観ていたものの、航海や登山の場面になると持ち物や自我を全て捨てた先に悟りが開ける的な現実味を帯びた教えになってきて妙に納得してしまう。しかし、"ここにいてはいけない"という教祖役の俳優の語りかけにより、映画の中の宗教さらには映画自体から鑑賞者は我に返り、映画ばかり観ていないでやるべきことやんなきゃ、という様にそそくさとプレイヤーの電源を切って日常に戻っていくのである。

所々で、十字架を背負うキリストやピエタなど新約聖書主題の絵画の構図が偶然的な自然な流れで画面に表されていたことやタロットについての映画制作側の詳細な学びが反映されており興味深かった。錬金術(詐欺とも言える)を身に付けるために様々な事業を行う富豪(詐欺師とも捉えられる)の仕事紹介の場面で独特な需要と供給(支配的従属関係の世界観)のバリエーションが面白かった。
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