うにたべたい

さよならジュピターのうにたべたいのレビュー・感想・評価

さよならジュピター(1984年製作の映画)
3.2
日本SF界を代表する作家・小松左京氏が監督、脚本を務めた本格SF映画。
氏によって小説化もされ、星雲賞を受賞しています。

舞台は、西暦2125年の未来です。
世界では地球外へのテラフォーミングが完了しており、宇宙に5億人もの人々が移住していますが、地球外で暮らすためのエネルギー確保に問題を抱えています。
そのため、太陽系開発機構(SSDO)は、木製を燃やして太陽代わりにする「木星太陽化計画(JS計画)」を進めています。
主人公の本田英二は、SSDOの計画主任で、環境保護団体「ジュピター教団」の反対に遭いながら、執務にあたっています。
そんな折、冥王星の軌道外から来る彗星が大幅に減少している事象が確認され、英二の親友「ホジャ・キン」はその調査に向かうが、謎の遭難を遂げる、という展開です。

『幻の湖』、『北京原人 Who are you?』と並び駄作という不名誉な評価で有名な作品です。
睡眠学習を辞さない覚悟で視聴をはじめましたが、個人的には意外にそんなに悪くなかったです。
確かに中盤の中弛みがきつく、テンポの悪い展開がダラダラと続くあたり退屈を感じましたが、終盤の盛り上がりはすごく良かったと思います。
ただ、序盤に示唆された異星人の存在や、ジュピター・ゴーストという謎の巨船の真相が語られること無く終幕してしまったのは肩透かしでした。
もう少しこの部分を掘り下げて、例えば、木星に住む存在が既のところで人類の危機を救うような展開があったらよかったのになどとと思ったのは、私だけではないのではと思います。

なお、"本作のクライマックスは壮大なスペース・メイク・ラブである" という感想をよく見ます。
どんだけ濃厚な絡みが見られるのかとワクワクしながら視聴をはじめましたが、まさかの想定の斜め上でした。
まさか宇宙空間で尻丸出しで絡み合うとは、波動と宇宙の神秘を感じました。未来は明るいですね。

また、それ以外にも"何だこれは"と思わずこぼしてしまうシーンが多々あります。
有名な"サメに襲われるイルカのため、英二がサメとバトルする場面"も疑問でしたが、唐突に始まる荒井由実の歌と海の映像は本当に謎でした。
歌自体は悪くないと思うのですが、正直、本作の雰囲気に荒井由実の歌が全くあっておらず、ハードSFな作風を壊す演出だと思いました。

ただ、SF作品として考察された設定まわりや、美術・特撮はかなり高水準だったように思います。
イルカにせよジュピター・ゴーストにせよ、やりたかったことはなんとなく伝わってくるので、あと一歩で名作に化けた気がします。
そういった意味で、非常に惜しい作品のように感じました。
誰が観ても駄作という作品ではなく、人によっては楽しめると思います。