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黒の報告書のRのレビュー・感想・評価

黒の報告書(1963年製作の映画)
4.5
うおおおお!!! 面白い! とある食品会社の社長が頭をどつかれて殺害されてるのが、その息子によって発見されるシーンから始まります。オープニングでいきなり画面に死体がドーン! インパクト大。主人公はその事件を担当する真面目一徹な検事の城戸。演じるのは宇津井健。あらゆる点においてニュートラルな雰囲気の人で、周りの濃ゆいキャラの引き立て役みたいな感じなのだけど、それが徐々に効いてきます。彼は、殺された社長の息子、愛人、妻と妻の愛人、ビジネス関係者など様々な人のアリバイや証言を集めていき、凶器の壺についていた指紋、現場に落ちていた髪の毛などなどから、容疑者を妻の愛人、人見十郎に定め、起訴する。一方、人見はものすごいやり手として有名な山室というおっさんに弁護を担当させる。こいつがいかにも傲岸で悪賢い、いやーなヤツ。裁判が始まると、山室の根回しで、容疑の根拠となってる証言やアリバイを、全員が全員、あの時の発言は動揺してたときのもので間違いでした、と覆していく。現代の情報化が行き渡った管理社会の感覚では、いやいや、帳簿の日付とか、金銭のやりとりの証書とか、勝手に変えたりできるわけねーじゃん、て思ってまうんやけど、すべてが手書きの現物のみで、完璧な写しもなければ日付印などもまだない?ような時代? なの? なるほどー。これやったら大変だろーな、と思った。映像的には、裁判のシーンで、カメラの被写体の奥行きが弁護人席、証人、検察側みたいに三つのレイヤーに分かれてて、それぞれのレイヤーでそれぞれの思惑やエモーションの動きがあるのを一度にとらえてるショットなど面白いし、悪徳に支配される人々、それぞれがそれぞれの反応を見せるのが実に興味深い。やっぱ一番イイのは不貞腐れた表情でぶーちゃんにしか見えない社長の愛人を演じる叶順子。当時社会的地位の低かった女の悲惨さをみごとに体現。時々ドキッとするくらい魅力的に見えるショットもあり、え?この人、やさぐれてなかったら実は美女?と思ってググってみたらそうでもなく、ミステリー。ほんと昔の女優って現代にはない不思議な魅力のある人ばかり。その他も俳優たちみなさんめちゃくちゃ個性的。多数の人間関係が複雑に絡み合ってて、シーンも多いし、テンポ速いし、どれが誰だか分からなくなりそうなもんだが、みんな濃いからすぐ覚えれる。増村監督の演出の手際良さと鮮やかさもよく効いてる。ほんで、検察側と弁護側のどちらが勝つのか⁈ という法廷劇とタイムリミットサスペンスが展開していくんやけど、最後の最後の数分間で、一気に深い深いヒューマンドラマに昇華させるのには、うおっ!とビックリしたし、ハート撃たれたし、思わず涙が…このときになってはじめてこの主人公がこんな地味な男である良さがじんわり沁みました。ううう。ううううう。いままでいろいろ増村作品見てきましたが、面白い作品多いわ! これからも楽しみである! 楽しみでしかない!
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