シズヲ

ニューヨーク1997のシズヲのレビュー・感想・評価

ニューヨーク1997(1981年製作の映画)
3.4
1988年――アメリカの犯罪増加率は400%を突破!!そんなことある!?マンハッタン島が巨大な壁で囲まれ、大量の犯罪者をブチ込む監獄都市と化す!!導入から叩き上げられる設定からして凄い近未来SFアクション映画。まぁ今となっては似通った世界観も少なくないけど、それでも80年代初頭の作品として見れば十分なインパクト。自由の女神の生首が転がるポスターのビジュアルも強烈だが、別にこんなシーンは無かったのでフフってなる。

『メタルギア』にオマージュされてるカート・ラッセルやマカロニ・ウエスタンの大スターであるリー・ヴァン・クリーフを始め、アーネスト・ボーグナインにハリー・ディーン・スタントン、更にはアイザック・ヘイズなんかもいて出演陣の濃さが凄まじい。絶妙なキャスティングのチョイス。エイドリアン・バーボーの巨乳ぶりと射撃スキルも色んな意味で強烈。

ミニチュアや光学合成を用いた撮影演出など、CGがまだ一般的ではなかった時代の技法も見ることができて面白い。往年らしい外連味もさることながら、当時のこういった創意工夫が印象深い。カーペンター自ら手掛ける音楽も良質。この時代のシンセサイザー系のBGMはあまり好みではないけど、本作は結構好き。

とはいえ80年代娯楽作の緩いテンポ自体がそんなに得意ではないので、途中まであんまり乗り切れなかった節はある。内容自体もあくまでB級物の領域。それでも犯罪者に支配されたニューヨークの退廃的ビジュアルはやっぱり良いし(監獄を囚人に自治させるな)、“No.1のデューク”を中心とする囚人共の異様な熱気もやたら味わい深い。シンプルな展開と荒唐無稽な設定なんかも後年のTVゲームのような趣に溢れている。
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