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殺人の追憶のTrueRyのネタバレレビュー・内容・結末

殺人の追憶(2003年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

展開の後味の悪さはあるのだが、観たあとに余韻には浸れる、後半に向かって良い作品に仕上がっている。それだけに前半のコメディタッチ、おバカ路線はもったいないと感じた。もっとシリアスでもっと刑事たちの葛藤や内面にフォーカスすれば名作になったのでは。

小さな村で起きた連続婦女暴行殺人事件、を追う刑事たちと容疑者達のやりとりが中心。さほど力を入れていない地元刑事たちにソウルから洞察力と推理力をもった刑事が加わり、犯人に迫るのだが、決定打がない。そんな展開に徐々に焦燥感と義務感の間で揺れ動く刑事たち。

犯人にたどり着けないのは言ってしまえば自業自得の印象が強いのだが、事件や犯人への思いが強くなる後半のシリアスな展開と見せ方が良い。本気で取り組んでいなかった地元刑事が身近な事件、地元を脅かす事件として取り組むようになってからが作品の本題か。刑事として好きか嫌いかはさておき人間さをもつ理不尽さや不条理さをもち、そこに犯人の異常さ、非情さ、冷徹さが重なり、その対比が浮かび上がる構図になっている。

これまでの積み重ね、と言ってしまえば残酷だが、それを感じたからこそ、刑事から足を洗う決断をしたような気もする。ソウルの刑事のその後、が気になる。
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