ストレンジラヴ

地下鉄のザジのストレンジラヴのレビュー・感想・評価

地下鉄のザジ(1960年製作の映画)
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「ケツ食らえ!」
あー頭痛がする。
ほのぼのした音楽と「世界の車窓から」を想起させるオープニング、そこからまだ人間臭さがプンプン漂っていた頃のパリの街並み、妙にませたザジ(演:カトリーヌ・ドモンジョ)に対してマヌケとしか言いようのない周囲の大人たち(特に男ども)。ここまでは良かった。
問題は後半である。セーヌ川沿いでガブリエル叔父さん(演:フィリップ・ノワレ)が観光バスに連れ込まれたあたりからだんだんカオスになってきた。そして終盤のレストランである。展開がどんどんカオスになる中で終始ませた態度を崩さないザジを見る限り、これは「子供の眼から見れば大人ほどしょうもない生き物はない。しかしやがては自分もそのしょうもない一員になり下がってしまう」やるせなさと皮肉であり、だからザジは最後にあのセリフを吐いたのではなかろうか。
華やかでお高く止まった反面、とてもじゃないが他人様には見せられない一面を却って想像させてしまうあたり、この作品の舞台はパリ以外にあり得ないのであった。