爆裂BOX

mute ミュートの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

mute ミュート(2001年製作の映画)
3.2
飼い猫を探して森を彷徨う老人は、男が少女の首を絞め殺す光景を目撃する。しかし、警察に通報するも死体は見つからず、以来、少女の夢にうなされるようになり…というストーリー。
サンダンス映画祭を始め、各国の映画祭で注目を集めたというサイレントホラー。監督は「ディセントZ」や「ミミックⅢ」のJ・T・ペティ。これがデビュー作なんですね。
人里離れた森の中の小屋で一人で暮らす老人が、飼い猫を探している最中に森の中で男が少女を殺す現場を目撃し、警察に通報するも死体は発見されず、以来眠るたびに少女の夢を見るようになるという内容です。
「サイレントホラー」という惹句通り、全編通してほぼ台詞がなく進行していきます。主人公の老人も発する台詞は殺人現場を見た後に新聞配達の少年に「殺人が…」という一言だけですし、他の登場刃部で台詞を喋るのは終盤に登場するチョイ役のキャラくらいです。劇中で流れるのも殆ど生活音くらいという徹底ぶり。主人公が殺人を目撃し、後にその死体を発見したと警察に通報し、警察の捜索や捜査が進んでいく所も台詞無しで役者の演技や表情だけで伝えていきます。主人公に電話がかかってくるシーンも直後に窓の外から主人公を映すショットに切り替わって、主人公の表情でその内容がどんなものか大体わからせる徹底ぶり。また、章ごとに分かれていて、次の章に移る時には○○章という風にタイトル表示されるようになっています(結構ネタバレにもなっていますが)
ジャンルは一応ホラーになっていますが、どちらかというとヒューマンドラマの趣が強いですね。前半はホラー成分は少女の夢を見てうなされるくらいで、主人公の日々の生活を描いてその孤独ぶりを浮き彫りにさせる様な演出で、特に派手な事も起きない地味で静かな展開が続きます。でも、不思議と飽きずに後半まで見れるのは「何かが起きそうな雰囲気」が漂っているからかな。
後半、主人公が孤児院訪れてからは物語も一気に動き出しますが、何故少女が殺されることになったのかについてはハッキリした答えは示されません。一応、終盤に登場する人物の台詞で自分は「悪魔憑きの少女?顔始末されて、主人公はその復讐に利用されたのかな?」と推測しましたが、ハッキリあっているとはわかりませんし。用務員に襲われるシーンは主人公が老人なだけに結構ハラハラしました。主人公の必死の抵抗ぶりも生への執着感じさせて良かったですね。孤児院の雰囲気などは「サスペリア」っぽさを感じました。
主人公の夢や終盤現れる少女は不気味な雰囲気出てて良かったです。
終盤ではアッサリしたものとはいえニャンコが殺されるシーンあるのでそういうのが苦手な人は要注意。あのオチはある意味主人公が巻き込まれる原因になった存在を排除して完全に主人公一人きりの閉じた世界を選んだという事かな。
前衛芸術的な雰囲気もあってかなり人を選びそうな作品ではありますね。