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恋する惑星の海のレビュー・感想・評価

恋する惑星(1994年製作の映画)
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誰かと比べたわけじゃないけれど、わたしは本当によく眠るひとだと思う。布団が肌に触れるのが好きで、冬でもときどき下着で寝て風邪をひいてしまう。わかってるのに今までに何度もやってる。そういう自分のどうしようもなさを、わたしはいつでも許してあげたいと思うけれど、そうやってずっと一人ぼっちで自分自身と駆け引きしているうちに、ふいに自分にある何もかもが、くだらなくてちっぽけだと思ってしまう時がある。そしてそういうとき、大丈夫だよ、好きだよと言って、誰かに抱きしめてほしくなる。無条件に、というわけじゃなく、わたしにある全部を一つずつ丁寧に並べながら、それが百にさえ満たなくても、それでもなおそれだからもっと愛していてほしいと、言えたならきっと泣いてしまうんだけど。人差し指を食みながらするような甘ったるい願い事に、よく似てると思う。あなたのことを巻き込んで離さないこの心ごと、ベッドに沈んで眠っていたいよ。映画を観た後で。目がさめるたびにあなたの、優しく降る雨みたいな目を思い描いて、また眠った。あなたに知っていてほしい。わたしが、朝うまく起きられないこと、花粉とエアコンとチョコレートのせいで肌荒れしちゃったこと、最近いつにも増して猫がわたしにべったりなこと、わたしが本当は、首とか指とか目とか肉体にあたる部分を全部捨ててあなたの心に抱かれたかったと思っていること、見えなくても触れられなくてもそれでもわたしはあなたを好きになっただろうと自分の愛にあきれるほどに自惚れてしまっていること。映画が毎晩観たいくらい好きなことも、今年はモダンホラーを夢中で読み続けてたことも、いま好きな音楽のことも。でもあなたはそんなことほとんど知らなくて、わたしばっかりがあなたのことをよく知ってる、寒いのが苦手だよね、回りくどい冗句が好きだよね、虫殺せないよね、人からの「ありがとう」が少しだけ苦手だよね。知ってるよ。わたしの上に飛行機を着けるのならそれはあなたがいいな、欠航でも待っていてほしいの、「一万年愛す」って合言葉の理由だって。手じゃなくて視線でいい、ことばじゃなくて声でいいの。夢みてるみたいなさびしさとあまさで、同じとこを回ってるの。一緒に居たい。一緒に居たいひとがいつも恋人であるとはかぎらない。それもわかっているから仕方なくて、いつも眠たくて、それ以上に夢をみてるだけ。わたしの心のなかには、決して誰にも見せたくない海があって、そこには朝のたび抱きあげるやわらかな生き物が居て、夜のたび連れ戻すいとおしい記憶があって、目を閉じた時にだけ見える光がある。あなたへの恋をはじめて友だちに打ち明けた時、「恋をしてるってどんな感じ」と聞かれた。それにわたしはたしか、「幽霊になる感じ」とかって、答えたんだ。そしたら、「例えまで怖いね」って笑われたんだけど、そんな冗談で、言ったわけじゃなかった。あなたが居ない間にも、あなたが居たすべての場所に代わりにわたしが居るような、そんな意味で、わたしは自分を幽霊にたとえたの。だから怖がってよ、だけど怖がらないで。きらきらしてたい、見えなくたって。ロマンチックで作られた夜に愛の星を散りばめたみたいな、たまらなくて泣いてしまった、そんな映画だった、冬に出会うんじゃなかったってすごく後悔してるのは今年こそはもうあなたのことで泣かないって決めてたのに泣いてしまったからかもしれない。あなたがこの長ったらしいラブレター読んだら、きっとすごくびっくりするだろう、でもいいのわたしはまだ21歳だから。じゃあ25歳になったわたしはどこにいると思う?ここに居なかったら、さみしい?夢で会いたい、わたし、どこへだって行けるよ。
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