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恋人たちのアパルトマンのtakのレビュー・感想・評価

恋人たちのアパルトマン(1992年製作の映画)
3.5
「妻への恋文」という印象的なフランス映画があった。夫婦となった後も出会った頃の様な熱い関係を維持したいと望む夫が、妻に匿名でラブレターを送る。子どもじみているが、一途な気持ちで始めたこと。その原作者アレクサンドル・ジャルダンが自ら監督して自作を映画化したのが、この「恋人たちのアパルトマン」。

男性側からの一方的で一途な感情という点は共通していて、ヴァンサン・ペレーズ扮する主人公は「男と女はセックスの関係をもたないのが純粋な愛を維持する方法だ」と信じて疑わない。彼には婚約者がいたが、ソフィー・マルソー扮するファンファンに会って、その奔放な魅力に惹かれてしまう。彼女もまんざらではないのだが、いいムードになっても手を出さない彼を不思議に思っていた。

そして、彼はファンファンのアパートの隣室を借り、彼女の留守中にマジックミラーを取り付け、壁越しに彼女を見つめ続ける生活を始める。完全にストーカーなので、彼の行動を肯定はできない。自分の思いに真っすぐ突っ走ってしまう子供のような一途さは、先に挙げた「妻への恋文」と通ずるところだ。調香師を目指しているファンファンは香りに敏感。壁越しに伝わる香りで、彼の行動がバレそうになる。そして…。

共感しづらいところもあるストーリーだし、最初から最後まで身勝手な男目線の映画だとも思える。だが、自由奔放なヒロイン像が何よりもこの映画の魅力。突然泳ぎたいと言い出して服を脱ぎ始めるシーンは、無邪気で開けっぴろげなヒロインを強く印象付ける。ソフィーの熱烈ファンとしては嬉しいし、"彼女を愛でる映画"としては文句なし。おっと、"彼女を愛でる"と表現した時点で銀幕のこっち側の僕らも、ヴァンサン・ペレーズ君と同じなのかな。うん、そうなのかもww
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