空海花

オルフェの空海花のレビュー・感想・評価

オルフェ(1950年製作の映画)
4.0
伝説は時代を越えなお行き続ける
永遠にだ。

ギリシャ神話のオルフェウス伝説から
ジャン・コクトーがシナリオを創造。
自らプロデュース・監督を手掛けた不朽の名作。

ギリシャ神話ではオルフェウスは吟遊詩人であるが、ここでは現代(もちろん製作当時のだが)の詩人。
ジャン・コクトーは詩人、小説家、劇作家、評論家、画家、映画監督、脚本家でもある芸術家。
ちなみにコクトーは『オルフェ』の戯曲も書いている。
タイトルバックの絵やフォントもいつもながら良い。

元はジャン・ピエール・オーモンに頼まれて書いた脚本であるが
紆余曲折ありジャン・マレーが主演。
脚本を書き上げた時、マレーはこの芸術性を称賛し、何とかウルトビーズ役で使ってもらえないかと頼んだ程であった。
結果的に映画はナルシストさと強さを備えた美貌のジャン・マレー以外には考えられない出来である。
どうにも他の役者では何とも許し難いキャラクターであるゆえに。
(むしろちょっと腹立つ笑)
鏡に顔を重ねるマレーの姿は
ギリシャ彫刻かルネッサンス絵画のよう。

物語は現代に幻想的に膨らまされ
“詩人のカフェ”の散漫な雰囲気や
詩人のスランプ
ラジオに、対のオートバイ。
地獄裁判がこじんまりとして逆にかわいい。
詩人とはどういうものか?
書くともなく書く人。
コクトー特有の詩的表現も散りばめられる。
静けさはどんどん後退する
コップ一杯の水で世界は明るくなる。

CGのない表現は創造力を刺激される。
事故のクラッシュもない。
今作は何より現世と冥界の道の映像がその見所である。
夢の中へ
鏡の中へ
逆回しやスローモーション
迷い込んでいるガラス売りの少年
独特の不思議な空間を演出している。

私は学生時代にコクトー作品にはジャンルを問わずお世話になった。
映画もリバイバル上映で映画館で観ている。
根本的な創造力とか意欲を掻き立てるのはやっぱりこういう作品で、
私にとって宝箱のようなものだ。

オルフェウス伝説では
オルフェは死んでしまった妻を助けるために冥界に向かう。
吟遊詩人である彼は竪琴の音色で冥界に住む者たちも魅了し、妻を取り戻す。
ただそれには1つ条件があり、それは光の世界に戻るまでに決して後ろを振り返ってはいけないというもの。

これにも変化が加えられるし
王女や彼らの間にいる運転手ウルトビーズなどのキャラクターの意外性。
神話とは異なる、
ユーモアと人間的な複数の愛がある。
そしてまた別の悲劇もある。
どれが悲劇かは受け手によって異なるかもしれない。


2021レビュー#018
2021鑑賞No.17


私は一応、言葉と物語好きを自負していて(自称の域をでませんが笑)
神話が基になった伝承とか昔話が好物です🍚🍽
オルフェウス伝説も日本のイザナギとイザナミの関連性があって
展開それぞれの色の違いが面白いです🤗
日本のは結構おどろおどろしいですが
オルフェウスも後日譚はホラーになりそうです。
コクトーが愛した2人の男性(マレーとエドアール・デルミ)に注目しても面白いと思います🤩
空海花

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