荊冠

オルフェの荊冠のレビュー・感想・評価

オルフェ(1950年製作の映画)
3.5
同名で戯曲も書いている「芸術のデパート」ことジャン・コクトーがシナリオ、監督を手懸けた作品。
あらすじは特筆することもないが、強いて言うなら展開や映像に時折アヴァンギャルドな面白さがありますね、程度か。
死神役のマリア・カザレスが時に見せる凍りつくようなマスクが美しい。
主演のジャン・マレーはコクトーの長年の愛人であったと言われている。彼は『美女と野獣』『双頭の鷲』など他のコクトー映画においても主演を務めているが、コクトーの信奉者であった三島由紀夫などはジャン・マレーの声を「下品」「浪花節みたいな声」とこき下ろしているそうで、個人的にはちょっぴり賛同してしまう。離れ目で顎のしゃくれたマレーの渋い風貌と共に映画世界に浸ることができなかったので、ちょうどジャン・デルヴィルが描いたような繊細なオルフェ像を鑑賞中に望んでしまったが、僕にフランス的な美男への共感性、あるいはコクトーの美意識への理解がまだないだけなのかもしれない、とも思った。
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