菫

春琴抄の菫のレビュー・感想・評価

春琴抄(1976年製作の映画)
3.5
「お前、わての言うことが聞かれへんのか」

百恵ちゃんの映画を観るのは初めて。
アイドル映画だけあって、谷崎潤一郎ならではのエロティシズムは稀薄だが、耽美的な純愛映画に仕上がっている。

佐助が盲目になるべく針で目を突くシーンは、原作ほどの生々しさはないものの、壮絶だった。ちなみに、原作ではこのように書かれている。個人的に好きな(というか衝撃を受けた)一節なので、こちらにも引用してみる。

なるべく苦痛の少い手軽な方法で盲目になろうと思い試みに針をもって左の黒眼を突いてみた黒眼を狙ねらって突き入れるのはむずかしいようだけれども白眼の所は堅かたくて針が這入はいらないが黒眼は柔かい二三度突くと巧うまい工合ぐあいにずぶと二分ほど這入ったと思ったらたちまち眼球が一面に白濁はくだくし視力が失せて行くのが分った出血も発熱もなかった痛みもほとんど感じなかったこれは水晶体すいしょうたいの組織を破ったので外傷性の白内障を起したものと察せられる佐助は次に同じ方法を右の眼に施し瞬時しゅんじにして両眼を潰つぶしたもっとも直後はまだぼんやりと物の形など見えていたのが十日ほどの間に完全に見えなくなったと云う。(『春琴抄』青空文庫より)

百恵ちゃん演じる春琴が、気高くて本当に美しかった。
着物や髪飾りも華やかで素敵。
菫