Kientopp552

暗殺のKientopp552のレビュー・感想・評価

暗殺(1964年製作の映画)
4.0
 本作は、主人公清河の「奇妙さ」を、彼と関わった人間たちに証言させることで、ストーリーを展開する、実に語り口の上手い仕上がりになっている。清河という毒をもって「毒」、つまり反幕の「勤皇志士」を制しようとする松平主税介(名優岡田英次)、清河の妾お蓮(岩下志麻)、幕臣で同志の山岡鉄舟、その妻英子(彼女が暗殺後刎ねられ、奪還した清河の首級を保管した)、清河の弟子たち、そして坂本龍馬などがそれぞれの清河像を語っていく。白黒で、陰影のコントラストを上手く使った映像、映像のぶれることを嫌わないカメラワーク、さらには、一人称の語り口も入れたカメラ・アングル(撮影:小杉正雄)など、本作では、視覚的にも十分耐えうるものを、松竹ヌヴェル・ヴァーグの「三銃士」の一人・篠田正浩監督はものにしている。
 惜しむらくは、坂本龍馬をも後に暗殺したとされる佐々木唯三郎(木村功が好演)が、本作ストーリーにおいて、確かに重要な役割を本作では演ずるものの、しかしながら、ストーリー自体の眼目は、俳優丹波哲郎がその大時代の演技でうまく体現した、清河の「不可解さ」であり、この点、タイトル名とストーリーの主題がずれているということであろうか。
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