半兵衛

哀しみの街かどの半兵衛のレビュー・感想・評価

哀しみの街かど(1971年製作の映画)
4.0
ただひたすら堕ちていくしかないジャンキーカップルの行く道を見ているだけというしんどい映画、そしてそんな最低な生活のなかでも主人公たちは勝手に希望を持って生きていく彼らの能天気さは何となくわかるので余計しんどくなる。

出てくる映像がいかにも70年代らしい生々しいものばかり、劇伴もないので汚れた空気がストレートに画面から充満して映画の世界へと誘う。

主人公の女性を麻薬の世界へと誘うダメ男を演じるアル・パチーノは後年ギャング役をやるとは思えないくらいダメダメなオーラを醸し出していて甘いマスクも相まって麻薬中毒者役が似合っているし、随所にアドリブめいた演技をかますところに後年の片鱗を覗かせている。そして相手役のキティ・ウィンの前半のノーマルな演技と後半のジャンキー演技の落差が凄まじく、アルを差し置いて主演女優賞に輝いたのも納得(もっともアルのサポートがあればこそ役になりきった彼女が光っていたとも言える)。

ラストはいかにもあの時代らしい救いようのない、でも明日は続くという虚しい終わりかた。そんなどうしようもない状況を示す役者の顔立ちが最高。
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