三体艦隊

サインの三体艦隊のネタバレレビュー・内容・結末

サイン(2002年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

心の一本。ストーリーは非常にテンポよく進むし、所々にユーモアもある。
とくに好きなのは、少しずつ迫ってくる死の恐怖/世界の破滅を見事に描き切っていたところだ。犬の叫び声、パタパタと走る何かの影、割れるガラスの音等。
テーマは「運命」。主人公が信仰を失った原因である事故、娘の潔癖症、息子の喘息、マイナスに思える出来事が救済のための必然であった。偶然ではなく。

以下、宗教的観点から。
明確に救済されたのが主人公一家だけで、毒ガスで殺された人々もいるように、「運命」は不平等である。しかし、キリスト教の神とはこういうものだ(予定説)。
また、救済とは、ピンチを救うのではなく、神の国へ行けることだと思うのだが、ここは映画的に描いているだけだろう。
さらに、宇宙人が存在することは、神は自らに似せて人間を作ったというキリスト教の否定にならないのか?
キリスト教が否定されたにも関わらず、何者かに救済され、神の存在が暗示された。ここら辺はあまり深く考えても仕方がない気がする。

この作品が心の一本になったのは、「人間は孤独だ」と言い切り、妻の最後の言葉を「脳神経の活動」と皮肉る主人公が、死を目の前にすることで、家族と連帯感を取り戻していく過程があまりに素晴らしかったから。本当の価値が浮き彫りになる。最後の晩餐の途中で、抱きしめ合い、涙する家族。家族のためなら、不思議と死の恐怖/世界の没落も安らぎ、立ち向かう力も湧き出る。まさに、人間讃歌の物語。
三体艦隊

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