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僕らのミライへ逆回転の一人旅のレビュー・感想・評価

僕らのミライへ逆回転(2008年製作の映画)
5.0
ミシェル・ゴンドリー監督作。

ニュージャージー州パセーイクを舞台に、自作自演で映画作りに奮闘するビデオ店員の姿を描いたコメディ。

『エターナル・サンシャイン』(2004)のミシェル・ゴンドリー監督が手掛けたドタバタ&ハートフルコメディの秀作で、友人の不手際により商品のレンタルVHSが全て壊れてしまったため、往年の名作映画を自作自演でリメイクして窮地を脱しようと奮闘するレンタルビデオ店員の姿を、「アナログ→デジタル」へのビデオ業界の変遷や、大規模資本による画一的な大作映画が正義とする風潮に対する反発の精神を背景に描き出しています。

古くは『サリヴァンの旅』に『アメリカの夜』『エド・ウッド』『マチネー/土曜の午後はキッスで始まる』『カイロの紫のバラ』『ファン・ボーイズ』『リトル・ランボーズ』そして誰もが知る『ニュー・シネマ・パラダイス』のように、“映画”そのものに対する深い愛情がひしと感じられる作品で、主人公のビデオ店員とその友人は『ゴーストバスターズ』に『ラッシュアワー2』『ロボコップ』さらには『ドライビング Miss デイジー』『キング・コング』など名作から近年の映画に至るまで自作自演でオリジナルリメイクを製作します。クロリティー的にはその辺の大学生が作る自主映画より遥かに低レベルですが、なぜか適当に作ったリメイク映画が地元客にバカ受けしてしまい、閑古鳥が鳴いていたビデオ店はまさかの大繁盛を遂げてしまうのです。到底現実味がないお話ですし、前半はおふざけ中心のおバカ映画のノリで突っ走っていますが、『ニュー・シネマ・パラダイス』へのオマージュが込められたクライマックスは消費主義の拡大によっていつしか忘れ去られた“映画と大衆の関わりの本質”を今一度呼び覚ましてくれるものであり、DVDが主流の時代に逆行したVHS店だからこその哀愁とノスタルジーに溢れた感動を味わえるのです。

主演のジャック・ブラックとモス・デフはお調子者&心配性キャラとして対照的な魅力を放っていますし、気のいい常連客のミア・ファローや店舗閉鎖を前に気落ちする店長のダニー・グローヴァーも味わいのある演技を魅せています。
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