ずどこんちょ

サウンド・オブ・ミュージックのずどこんちょのレビュー・感想・評価

3.7
昔、学校の音楽の授業で見た記憶がありますが、私は全部を見たわけではなかったということが分かりました。
サウンド・オブ・ミュージック、ただのハッピーミュージカルではなかったのですね。今まで知らずに生きてました。
ファミリー向けのミュージカル映画でありながら、適度に第二次世界大戦前の当時の社会情勢も反映していて見応えあります。

楽曲は有名なドレミの歌はもちろんのこと、どこかで聞いたような有名な曲ばかりで楽しいです。子供達の歌声も美しいだけでなく、歌うことが心から楽しそう。
雷に怖がる子供達に歌う"私のお気に入り"という曲も、あれっ?って思ったらJR東海の「そうだ、京都行こう」じゃないですか。たった一本の映画から本当に沢山の名曲が生まれたのです。

家族で合唱団を作って公演したトラップファミリー合唱団たちの運命を辿ったストーリーです。実在の話をベースに脚色して作られています。
主人公の自由奔放な修道女マリアは、この一家の家庭教師として赴任しました。規律と秩序を重んじるトラップ大佐でしたが、マリアはそこに新しい風を吹かせます。子供達の悪戯を善意で返し、彼らの望みを叶えるマリアの優しさ。修道院では規律を逸脱する行動が目立っていましたが、彼女もやはり神の教えに従う者です。ストレスフルな子供たちの悪意を上手く受け止めました。
さらにマリアは子供達に奔放に遊び、自由に歌を歌う楽しさを教えます。これはマリアならではの教育方針。当然、大佐の教育方針とは真逆でしたが、それは本来、亡くなった妻がいた頃にはこの家にもあったであろう子供たちの笑顔と歌声だったのです。大佐は改心し、同時にマリアに心惹かれていきます。

一度は大佐の婚約者の画策もあって一家から離れて修道院に戻るマリアでしたが、背中を押され、自分の本音と向き合って再び一家の元へと戻っていくのです。
結婚式のシーンですっかり丸く収まって大団円かと思いきや……前々から伏線の張ってあったナチスドイツの流れに飲み込まれていく衝撃の展開へと発展していきます。

実は色々と伏線もあったかと。
山を越えるのは普段から高原で走り回っていたマリアとの遊びの時間があったから成し遂げたようにも思えますし、軍の車が故障させられるのもその直前に大佐の車が故障してると嘘の芝居をうつシーンが思い出されます。故障してない車と故障した車。すべては神(いや、修道女?)の導きです。

それから長女リーズルの恋人で郵便配達員のロルフ。二人の関係も時代に翻弄されて切ないです。ただ、仲睦まじく歌っていた頃、確かにリーズルは「甘い言葉を信じて痛い目にあうかも」と囁いていました。
もちろんあの頃はそんな意味じゃなかったのですが、まさか本当に立場や価値観が変わるとは…。これが全体主義の怖さです。

名作にして、よく見ると奥深い。大人になった今だからこそ、もう一度見返したい映画だと思いました。