QTaka

サウンド・オブ・ミュージックのQTakaのレビュー・感想・評価

4.5
定番映画の代表の一つ。
ミュージカル映画の定番でもありますが、戦争映画であることを忘れてはいけない。
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冒頭の説明シーンの文字

Salzburg, Austria,
in the last Golden Days
of the Thirties.
オーストリア ザルツブルグ
1930年代 最後の黄金の日々

この1930年代のオーストリアは、アメリカに端を発する世界恐慌のあおりで、国内経済が崩壊し、政治も国内をまとめることがうまくいかない状況で、隣国ドイツのナチス政権の圧力を得て、国内を二分する政治勢力による実力行使によって内戦が起こるまでに至っていた。
つまり、ナチスの影がすぐそこまで来ていた。
結局、1938年ナチスによって、併合されてしまう。
そんな時代のザルツブルグが舞台。
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そんな国内情勢が、しだいにこの家族に暗い影を落としていく。
まず目に留まるのが、主人公の大佐の肩書き
”オーストリア・ハンガリー帝国海軍退役将校 大佐”
オーストリア・ハンガリー帝国は、第一次世界大戦に敗北
この帝国は、対岸にイタリア半島を望むアドリア海に面する広大な国家だった。
敗戦後のオーストリアは、内陸国なので、海軍などあるはずもなく。
この海軍大佐の肩書きは、敗北前、第一次世界対戦前の帝国海軍のもの。
だから、ドイツに併合されたら、海軍復活?って感じで、召集令状が来るんだね。
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台詞の中に、ナチスの影が出てくる。
「ドイツびいきの人たちは、大佐に批判的だ」
つまり、ドイツ併合に同意する世論があるということを示している。
一方、大佐は、「皇帝から勲章をいただいた」と評されていて、オーストリア・ハンガリー帝国の軍人であることを誇りにしていることがうかがえる。
「オーストリアは、何も変わっていない。
音楽祭はその事実を世界に示すはずだ」
ナチス併合への徹底抗戦の構え
自宅に掲げられていたハーケンクロイツを引き裂く場面。
世論が動き、実際に国が併合され、それでも抵抗する。
音楽が、その抵抗の姿勢を表す象徴になる。
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音楽祭
「エーデルワイス」
大佐の独唱から会場全体の合唱へ
オーストリア市民の、無言の、歌声の抵抗のとも受け取れる。
(カサブランカの酒場のラ・マルセイエーズにも似たような)
ミュージカル作品ではありますが、れっきとした反戦映画、反ナチス映画であることが読み取れます。
基本が、音楽映画ですから、この舞台のザルツブルグやオーストリアの情勢についての描写はほとんどありませんが、こうして読み解いてみると、時代の背景を最大限表現されていることがわかります。
全編にわたって、覆いかかるような不安と、圧力が描かれていて、それを感じるからこそ、青空と、山の緑の開放感や、歌声の素晴らしさが胸にしみるのでしょう。
やっぱり良い映画ですね。
QTaka

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