アンデルセンの同名童話をモチーフにした、バレリーナの悲劇。
厳格な独裁者・レルモントフ率いる、名門バレエ団に入団したヴィッキー。
同じく彼に、作曲の才能を買われたジュリアン。
新作「赤い靴」のプリマに抜擢されたヴィッキーと作曲を担当したジュリアンは、舞台を大成功へと導く。
そして、いつしかふたりは恋に落ちていた。
団員同士の恋愛を厳しく禁じるレルモントフは、目を掛けていたヴィッキーの裏切りと嫉妬で激怒する。
バレリーナとしての成功か、恋愛かの二者択一を迫られた彼女は、ジュリアンと共にバレエ団を去って行くのだが…。
臨場感溢れる舞台の素晴らしさ。
バレエダンサーであるモイラ・シアラーの、優美で迫力ある舞踏。
マーティン・スコセッシ監督によって復元された映像美が、古さを感じさせない。
恩人と恋人の間で揺れ動くヴィッキーが精神的に追い詰められ、衝動的にとった行動。
赤い靴=赤いバレエシューズに囚われたヒロイン。
童話そのままの、心が解放される彼女を表した場面が哀しい。
ラストシーンも秀逸。
レルモントフ役アントン・ウォルブルックの、冷徹で、威厳に満ちた演技が素晴らしい。
また、皮肉屋のダンサー兼振り付け師グリシャを演じたレオニード・マシーンも、個性的で忘れ難い。
ラストに見せる、レルモントフの感情を押し殺した様な表情が印象に残る。