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忠臣蔵 (天の巻・地の巻)のtakatoのレビュー・感想・評価

4.1
 アマプラで視聴。王道中の王道な「忠臣蔵」でも、日本映画の祖であるマキノさんが手掛けた、阪妻や長谷川一夫などの時代劇映画黄金期の豪華キャストを用いた本作は特に秀でている。


 そもそも昔から歌舞伎にしろなんにしろ庶民のエンタメというものは、話の内容は周知でいかにそれを魅せるか演出するかの細部に注目するという今で言えば「わかっている」観客を前提としたものだった。しかし、最近はやたらネタバレだのなんだのと騒ぐの笑止!な事態である。みんなミステリーじゃないんだから、細かいことグチャグチャ言うんじゃないよ!と言いたい。


 話が横道に逸れてしまったが、本作も驚きは何もない。周知の話が周知の通りに進むだである。だからつまらないかと言うととんでもない!。むしろ思わず目頭が熱くなる演出と俳優の力が見事に効いている。基本の人情で泣かせる芝居なわけだが、下手くそすぎて寒いことになりがちな現在の状況とは全然違う抑制と美意識が活きている。


 松の廊下や立花左近の場面で能の謡を上手くBGMに使うことで心情を描くのが、様式的な芝居と相性が良くて冷静に考えるとアレ?ってならない勢いを場面にしっかり与えてくれている。特に後者で「勧進帳」が流れるのがグッド!。


 そして、立花左近の件では言わず語らずに表情だけで相手の気持ちを察しているよ…って示す演技合戦が実に見事。二大スター夢の共演だと平等になるように色々配慮しないと大変だったらしいが、ただ威張ってただけじゃない流石の輝きがあると言わざるを得ない。


 それにしても時代劇は「座頭市」のようなタイプは別だが、やはり白黒の方が別世界感があっていいいかも。なんでもかんでも見え過ぎればいいってもんじゃない。
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