デニロ

湖の琴のデニロのレビュー・感想・評価

湖の琴(1966年製作の映画)
4.0
中村鴈治郎が佐久間良子に懸想して何もかもを奪いたい、でも、という葛藤を続ける緊張感溢れる1966年東映映画作品。原作水上勉。脚色鈴木尚之 。監督田坂具隆。

美しいひとを縛りたいという欲望はあるのだが、それを実行するには相当な権力を持たなければ成就しない。中村鴈治郎は京都の三味線の大家。田舎で見つけた生糸農家の奉公人佐久間良子の美しさに目が眩み何が何やらわからぬままに唐突に内弟子にしたいと望み手の内にする。妄執に混乱しながらも自制し師匠の威厳を保つのだが、ついには堪え切れず凌辱に及ぶ。佐久間良子には中村賀津雄という相思相愛の仲の恋人がおり、師匠との無理矢理な関係の中にも忘我を覚えるようになり苦に已む。中村鴈治郎にも古くからの愛人山岡久乃がおり執拗に後妻の座を求められる。山岡への中村鴈治郎の対応を見るにつけ佐久間良子の将来も目に見える。権力者は人の上を歩けるのだ。

佐久間良子は20代後半に差し掛かった年齢でもはや初心な生娘には見えない女の色香満開。中村鴈治郎は60代半ばの好色な狒々爺を見事に演じつつ、劇中劇で創作舞踊を披露している。見事にエロチックだった。

橋本忍の『幻の湖』は本作にインスパイアされたものではなかろうかと思われるシーンがあり、ラストシーンなどはそのままに呪いが掛かったのではなかろうかと思う。

さて、繭から一本の糸を取り出す術はいつ見てもよく分かりません。
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