ストレンジラヴ

老人と海のストレンジラヴのレビュー・感想・評価

老人と海(1958年製作の映画)
3.6
「人間は負けない。打ち砕かれることはあっても負けはしない」

ヘミングウェイの代表作をジョン・スタージェス監督、スペンサー・トレイシー主演で映像化。キューバの老漁師サンティアゴは84日間もの間不漁が続いていた。しかし85日目、彼の縄に巨大なカジキマグロが引っ掛かる。4日間にもわたる死闘の末に巨大カジキを仕留めたサンティアゴだったが、その巨体ゆえに舟に横付けされたカジキの血の匂いをアオザメたちが嗅ぎ付けるのだった...。
現状、あらゆる文学作品の中で個人的に最高傑作だと思っているのがアーネスト・ヘミングウェイ「老人と海」である。あらゆるムダを削ぎ落とし、冷徹なまでに起こったことだけを描いたこの小説は、日本語訳の文庫本にしてわずか150ページ程度の分量しかない。しかし発売直後からたちまち大ベストセラーとなり、遂にはヘミングウェイにノーベル文学賞までもたらしたまごうことなき代表作である。
だが、名文学を映像化すれば名作になるかというと必ずしもそうではない。本作も残念ながら映像化そのものに無理があったと言わざるを得ない。確かにスペンサー・トレイシーの老人は名演だが、まずキューバの漁師にはどうしても見えない。また、本作はブルースクリーンの合成技術を用いた最初期の作品のひとつらしいのだが、不慣れなためだろうか、誰がみてもひと目で合成だと分かる代物なのである。そのせいか、スペンサー・トレイシーの動作からカジキマグロの重さがイマイチ伝わってこない。いくら力持ちの老人とはいえ、足場が安定しない舟の上で、しかも自分の舟よりも大きなカジキマグロに引っ張られて立っていられるわけがない。そして登場人物が少なすぎるために間が持たず、劇中通してほぼナレーションが流れているのも気になった。もう少しサンティアゴに独り言を言わせてもよかったと思う。
恐らく現代で映像化しても無駄にCGをぶち込んで終わりだと思うので、やはりこの物語は字で読んで想像を膨らませるのがベストな受け取り方だと思います。疲れたので寝ます。ああ、ライオンの夢が見られそうだ。