30年ほど前、卒業旅行で中国に行った時、人の多さ、トロリーバスの乗り口に殺到する人の群れに圧倒された。
1930年前後というと、それからさらに60年ほど遡る。調べると、その頃の上海は"東洋のパリ"と言われるほど大都会だったらしい。
ただいずれもそれらの中国のイメージは、ごみごみしていて空気が汚い。
そこへさらっと現れるマレーネ・ディートリッヒ。その対比というか、彼女だけが浮き立って見える。違う空気感が漂う。
その辺の男には見向きもしないふうの上海リリーと、沈着冷静かつやる時にはやる軍医ハーヴェイの、互いに想いを伝え合う言動は、この映画の最大の見どころ。
余計なことは言わない、粋な言い回しとドキッとするような仕草などが、映画の良さ、面白さを引き立てる。
また、モロッコといい上海といい、映画はその舞台となった土地・国のその当時の情緒を伝える素晴らしい記録・メディアである。