櫻イミト

上海特急の櫻イミトのレビュー・感想・評価

上海特急(1932年製作の映画)
3.5
「モロッコ」(1930)、「嘆きの天使」(1930)などの名作を生んだ、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督×マレーネ・デートリッヒの5作目。

内乱の中国。北京から上海に向かう特急に乗った娼婦・上海リリー(マレーネ・デートリッヒ)は、かつて恋人だったイギリス軍曹ハーヴェイ(クライヴ・ブルック)と5年ぶりに再会し、二人の恋心が再燃する。そんな中、叛軍の機関銃射撃による列車ジャックが起き、乗客たちは連れ出されてしまう。叛軍のリーダーがリリーに無理強いするのを見たハーヴェイは思わず殴りかかって捕えられる。。。

とにかくビジュアルが好みだった。漢字だらけの列車や現実にはあり得ない北京の雑多な風景が素晴らしい。細い路地を進む機関車の図は、つげ義春「ねじ式」のネタ元のひとつだろう。上海リリーと同室の中国娘も怪しげで、東西の悪女が並ぶは映画の行く末を十分に期待させる。退廃的で悪趣味な美術の中でディートリッヒは究極の妖艶さを放つ。おそらくこれで監督の目的は達成されているのではないか。

シナリオは割と直線的で甘い話だが、昨今のスチームパンクを先取りした退廃美は一見の価値あり。
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