松井の天井直撃ホームラン

孤高のメスの松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

孤高のメス(2010年製作の映画)
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☆☆☆★★★

原作は文庫本を3巻まで買っていたが、1巻目を読み終えて「さぁ2巻目…」って時に、どこに行ったのか解らず、結局1巻分しか読んでいない状態。

映画は、ピッツバーグの部分を省略。主人公である当麻の人間性や、地域の医療問題と、大学病院とのしがらみも大幅にカットした事で、上映開始約20分程度で早くも1巻分を終了するハイスピードで展開する。その為、1巻目のハイライトと言える宗教問題を含む手術場面は完全に削除となっている。

一番驚いたのは、映画全編を堤真一演じる天才外科医当麻を慕う、ナース役夏川結衣の日記による回想で展開している事。その事で、医療問題を提示している傍ら普遍的な恋物語になってもいる為に、観客側は彼女目線による肩入れをしてしまう。
その結果として、「先生は嘘つきです…」と言うセリフの場面では、ついつい胸に迫る感情が押し寄せてしまう。
映画としては、時折視線が入れ替わるのが若干違和感を感じはするのですが、この大胆な変換が巧く作用している様に見受けられました。主人公が都はるみの歌を熱愛している設定も面白かったですね。
脇役陣も余貴美子はいつもながらの演技で見せば充分。徳井優や安藤玉恵それに、出番こそ少ないが堀部圭亮等もしっかりと存在感を示す。
逆に悪役としての存在で、活き活きとして描かれる生瀬勝久だが、原作のキャラクター設定では1巻目だけを読んだだけですが、その悪役としてギラギラした存在感は、とても原作には及ばない様に感じた。もっと厭らしい存在感が在る人物像だったのだが…。何だか単なる小物と言った描かれ方だったのが実に残念でした。

医療問題を扱いながらも、1人の女性による恋愛感情を描き、娯楽性にも優れた秀作だと思います。

(2010年6月10日TOHOシネマズ西新井/スクリーン8)