福福吉吉

ホームランが聞こえた夏の福福吉吉のレビュー・感想・評価

ホームランが聞こえた夏(2011年製作の映画)
4.0
◆あらすじ◆
チャ・ミョンジェは中学野球で優れた投手だったが、突然聴覚を失い、野球への道を断念する。一方、素行不良で謹慎中のプロ野球選手のキム・サンナムは聴覚障害者の高校の野球部コーチを依頼される。やる気のないサンナムだったが、ミョンジェの投球を見てミョンジェを野球部への入部を誘う。

◆感想◆
聴覚障害を持つ高校球児が大会に出て勝利を掴もうとするストーリーはとても熱いものがあり、また、彼らの情熱に触れていくうちに野球への情熱を取り戻すプロ野球選手というのも熱くて、本作で2本分の熱さを楽しむことができました。

ストーリーはテンポよく、基本的には明るい雰囲気で進んでいくため、とても観やすい作品となっています。レベルの低い野球部とどん底にいるプロ野球選手というともに底辺にいるところから一緒に少しずつ光明を見出していく展開となっており、とても分かりやすくて感情移入しました。

本作の鍵を握るプロ野球選手のキム・サンナムは素行不良でプロ野球界で鼻つまみ者になっていて、聴覚障害者の学校の野球コーチの就任もマネージャーのチョン・チェルスの世間的なポイント稼ぎの算段で実行されます。ここまで書くとどうしようもない人物なのですが、野球を見る目は確かであり、野球部に足りないものをズバリと指摘し、指導していく姿は超一流の指導者だと思いました。

聴覚障害者にとって学校で学ぶべきものは何か、という部分がもの凄くクローズアップされているように感じました。元々面倒を見ていた野球部の顧問の先生から見て、サンナムの指導はとても乱暴で優しさに欠けるものに見えたのだと思います。しかし、本気で勝つなら、健常者に負けないためには必要な指導であり、その中に「なにくそ」と思える精神が必要だったのだと本作を観て思いました。これは聴覚障碍者だけじゃなく健常者にも当然必要なものであり、その大事な部分をしっかり見せてくれていたように感じました。

ストーリーの意外性はあまり無いですが、きっちり締める部分を締めていてスポーツならではの熱い感情を呼び起こしてくれる作品だと思いました。とても面白かったです。

鑑賞日:2024年1月17日
鑑賞方法:Amazon Prime Video
福福吉吉

福福吉吉