マヒロ

トム・ジョーンズの華麗な冒険のマヒロのレビュー・感想・評価

3.0
イギリスの大地主のお屋敷で、ベッドに捨て置かれた孤児が発見される。地主はその赤ん坊にトムと名付け養子として育てるが、成長したトムはその甘いマスクで女性達と次々と関係を持つ奔放な男になっていた……というお話。

一応アカデミー賞で作品賞その他諸々を獲っているが、いかにも賞レース好みな作品と言うわけではなくとことんふざけきったナンセンスコメディと言った感じで、イギリスらしい人を食ったようなギャグが連発される、肩の力を抜いて観られるような作品。
主人公のトム・ジョーンズ(アルバート・フィニー)は会う人会う人に男前だと評される色男で、誘われるとホイホイついていってしまう尻の軽さが何ともニクい奴。悪い奴ではないが聖人でもないという人間臭さが良いところだが、まったくもって誠実さに欠ける人なので主人公として好きになれるかというとそんなでもないかも。
彼と相思相愛ながらしょっちゅう浮気されてプリプリ怒っているソフィ(スザンナ・ヨーク)のコメディエンヌっぷりは結構好きで、コロコロ変わる表情とお金持ちの娘ながら飾らない性格が素敵なキャラクター。

カメラに向かって語られなかった部分をまとめて状況説明したり、ナレーションで「ここは飛ばします」とか言ってシーンをカットしてしまったりと、第四の壁を越えた演出が軽妙でテンポが良いが、全体的にはそこまで好きなセンスのコメディでは無くて、嫌いではないがハマる作品ではなかった。
アカデミー作品賞でいうと、この前に『ウエストサイド物語』『アラビアのロレンス』、この後に『マイフェアレディ』『サウンドオブミュージック』と大作がひしめき合っていて、その中に突然変異的に今作がいるというのも、この作品らしさがあってなんだか面白い。

(2021.168)
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