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トム・ジョーンズの華麗な冒険のBaadのレビュー・感想・評価

5.0
最初にTVで見た時から大好きで、何度も見た映画ですが、久しぶりにVTRをDVDに移し替えるためにまた見てみました。

映画としてまったく突っ込みどころの無い完成度の高さと、イギリス文学史上最高のストーリーテラーといわれるフィールディングの原作を当時全盛期の劇作家のジョン・オズボーンが脚色、という文学的性の高さが両立している上に、娯楽性の高い艶笑コメディーに仕上がっているという、驚くべき作品です。

ここまで揃っていたら、役者の演技位は少しダメなところがあるのでは?とも思ってしまいますが、どの登場人物も、容姿・演技・アクション、全く非の打ち所がありません。

若い頃のアルバート・フィニーの立ち回りの時の、外見にそぐわない身のこなしの優雅さと軽さと来たら、もう、ほとんどため息がでそうです。

特に素晴らしいのがサイレントの手法を多用してアクションで物語をつなげている部分。長大な原作を手際よくまとめており、二時間少しの時間にまとめてあるのに原作の味わいも全く損なわれていません。

今回見てみて初めて気付いたのですが、この映画は監督のトニー・リチャードソンがプロデューサーも兼ねているのですね。スタッフといいキャストといい、満を持しての製作だったようで、その心意気はどこから見ても楽しさ満載の画面からびんびん伝わってきます。

さらに驚くべき事に、この原作の翻訳は岩波文庫なのですが、名翻訳者朱牟田夏雄氏による翻訳は堅苦しくなく楽しく読めるというおまけ付きです。

時代物のコスチュームプレイが好きでこの映画を未だご覧になっていない方は、多少無理をしてでも見る価値のある作品かと思います。(VHS/セル)

(原作も映画も傑作 2011/8/6記)

ちなみに、この映画のメイキング写真集を今はなき京都書院で見つけて愛読しております。アルバート・フィニーもスザンナ・ヨークも監督もノリノリでむっちゃ楽しそう。

これぞ映画です!

良い現場だったんでしょうね〜。
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