sushi

ドイツ零年のsushiのレビュー・感想・評価

ドイツ零年(1948年製作の映画)
4.2
まず、会話の場面で人やカメラがよく動いて退屈しなかった。また、元教師と少年が路面電車に乗って車両が画面から抜けていくと同時に背景の荒廃した街並みが姿を現す場面は、フィクションの人物の一時的な不在による現実の風景の生々しさがあった。

主人公の少年は「弱者は生きていても意味がない」という考えに侵されてしまって父親を殺してしまうけど、今度は自分が家族の中で「弱者」の位置になってしまい宗教的な罪悪感と実存的不安により自殺してしまう。
ラストでビルの床に開いた穴から滑り台で降りていくんだけど、これは子どもとして遊びたいっていう気持ちが表れれているように見えて、それと同時に直後の飛び降り自殺の予兆でもある。働かざるもの"生きる"べからずの価値観に囚われた少年は純粋な子どものように遊ぶこともできないし、かといって働くこともできないから自分の存在を赦すことができず死を選んだ。
少年の思考は全て行為として表れているのが面白かったけど、それ以上に子どもの自死を(たとえフィクションだとてしも)見るのが辛かった。
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