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ふたりのロッテのodyssのレビュー・感想・評価

ふたりのロッテ(1993年製作の映画)
4.0
【よくできているが最後が惜しい】

作家ケストナーの有名な原作を現代に移し替えた映画です。
 
父母の離婚によって1人ずつ父と母とに引き取られた双子のドイツ人少女が、英国でのサマーキャンプで出会って真相を知り、互いに入れ替わってドイツの父と母のもとに帰り、なんとか4人でふたたび暮らせるように画策する、というお話。

双子といっても、父に育てられたシャルロッテが奔放、母に育てられたルイーズが優等生というふうに性格が正反対であり、その違いが父母の元に入れ替わって帰ってから起こる喜劇にたくみに利用されていて、なかなか楽しめる作品になっています。電話で二人が連絡を密にとりながら作戦を考えるところや、お母さんのキャリアウーマンぶりなど、現代的な要素もうまく活かされています。双子二人の描き分けも見事ですし、父母を囲む人たちや小道具も上手に利用されています。

唯一惜しいのは、最後で父母を和解させるところが、あまり説得的ではないことでしょう。長い間別々に暮らしていた父母にはそれぞれの暮らしがあり、それを一緒にさせるとなると容易なことではありません。また、そのことは作中父母によっても語られていますし、それだけにラストへの持っていき方にはもう一工夫必要だったと思います。

これには母の設定および女優の選び方の問題もあって、家庭を顧みないキャリアウーマンが似合いすぎている冷たい印象の女優を選んでしまったのも、最後の説得力をそぐ原因になっているような気がします。列車をストップさせるシーンが最初と最後に使われて、ちょっと黄金期のハリウッドを思わせる巧みさをも備えている映画だけに、残念なことです。
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