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ヴァンダの部屋のcyphのレビュー・感想・評価

ヴァンダの部屋(2000年製作の映画)
3.7
ヴィタリナ、コロッサルユースに続いてペドロコスタマラソン③ リスボンはフォンタイーニャス地区にカメラを持ち込んだ最初期の作品だけど、地区を屋外から映すショットはほぼ現れず、基本的にはヴァンダとその友人が暗いヴァンダの部屋のベッドの上でドラッグ(ヘロイン?)をやりながら同じ話をぐるぐる繰り返しながらひどい咳をしているのを眺める時間ばかり ついうとうとして目が覚めても同じようなつらい時間が続いているので3時間が永遠に感じられた ドラッグをやってないヴァンダは野菜売りの実家のキャベツとレタスを木箱に入れて町に売り歩くのだけどなぜキャベツとレタスだけなのかも謎 しかもぜんぜん売れない 「俺も昔はひどいヘロイン中毒だったよ」と語りだす別の男も結局ぜんぜん一緒に薬やりながら「病院入れられて離脱症状に苦しむのがいちばんこわい」と言い合うのだからほんとに救いがない

フォンタイーニャス地区の取り壊しと強制退去、という大きな物語をあえて重機の騒音としてしか作品に取り込まず彼女たち・彼らの苦悩や生活そのものに密着するというソリッドなスタイルはたしかに凄いのだけどとにかくつらくてしんどかった ×印のつけられたコンクリ製の家屋が重機でゆっくりと壊されていくシーン、ヴァンダが友人と「この界隈には楽しい思い出がたくさんある」と不意にポジティブなことを言い出すシーン(しかしそれは既に失われていくものへの執着でしかない)などは感情を揺さぶった あと無人の実家のリビングのテレビに野生のラッコの親子が映るショットがなぜかあって、泣けた
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