櫻イミト

オーケストラの少女の櫻イミトのレビュー・感想・評価

オーケストラの少女(1937年製作の映画)
4.0
”歌う少女スター”としてジュディー・ガーランドと人気を二分したディアナ・ダービン(当時16歳)の代表作。失業楽団のアメリカン・ドリームを描くポジティブ・エンターテイメント。監督は「聖衣」(1953)のヘンリー・コスタ―。

失業音楽家の父たちの復活のチャンスを何とか掴もうと娘のバッシ―(ダービン)が奔走。世界の名指揮者レオポルド・ストロフスキー(本人が出演)の元に押しかけ直談判するが一度は無下に断られる。しかし不屈の挑戦魂が幸運を呼び込み。。。

子供の頃に観たはずの名画だったがすっかり忘れていた。思ってた以上に明朗快活なエンターテイメントで、演出構成、映像、テンポ、どれも非常に完成度が高くて楽しめた。猪突猛進に走り回るダービンの明るいキャラクターと歌声の魅力。音楽映画としても、全盛期のストロフスキーのキレのある指揮とフィラディルフィア管弦楽団の演奏も素晴らしい。

ハリウッド映画史において、逆境を希望と行動力で突破していくフォーマットを完成させた一作かもしれない。逆転のきっかけとなるのが、最初はヒロインの歌うモーツァルトの「ハレルヤ」、そして失業楽団がストロフスキーの屋敷で披露するリストの「ハンガリア狂詩曲第2番」。どちらも音楽が人の心を動かす様をドラマティックに描き出した名シーンであり、その手法は史上最強の音楽映画「サウンド・オブ・ミュージック」(1965)へと受け継がれていく。

本作を再見して改めてディアナ・ダービンに興味を持ったのだが、彼女のヒット映画の数々が何故か日本ではソフト化されていない。再評価と日本語版ソフト化を望みたい。

※アンネ・フランクは、第二次世界大戦中に隠れ家の自分の部屋の壁にダービンの写真を貼っていた。隠れ家はそのまま保存されており、ダービンの写真は現在もそのまま貼られている。
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