Ricola

悲しみは空の彼方にのRicolaのレビュー・感想・評価

悲しみは空の彼方に(1959年製作の映画)
4.0
白人のローラと黒人のアニー。宿無しのアニーとその娘を泊めたことから、共同生活が始まる。10年以上に渡る彼女たちの友情が、それぞれの娘の関係とともに描かれる。


最初はどちらもシングルマザーで一見立場は対等のように見えるが、外向きではメイドと伝えるしかないし、ローラのメイドであることをアニーも受け入れている。
「肌の色など関係ない」と言っても黒人は黒人の役割から抜け出すことはできない。それは白人に仕えるという立場から、だ。その人種差別の苦しみを1番感じてしまうのが、アニーの娘サラ・ジェーンである。彼女は黒人の血が自分の体を流れていることを恥じている。だからこそ彼女は差別の苦しみをよりいっそう感じてしまう。

二組の母娘についてだけではなく、彼女たちを気にかける青年スティーブも、ただローラの恋人としてだけではなく、物語に絡んでくる。ローラは夢を貪欲に追求し、一方スティーブは夢を諦めて地に足をつけた生活を手に入れる。二人とも成功を掴んだわけではあるが、どこか心が虚しいと言う。
スティーブの存在がこの作品でどれほど意義深いのかと言うと、彼はローラとアニーのシスターフッドを邪魔しない。いくらローラを愛していても、彼女を奪い去ることはせず、二人の友情および彼女たちの娘までをも気にかけ続けるのだ。

では肝心のローラとアニーはというと、どちらかの娘が母親に反抗したり口答えをしたら、「もうひとり」の母親がその娘を叱る。それは娘たちを思って、という以上にひどいことを言われた親友を庇い相手に応戦するような思いなのではないだろうか。長年闘い続けてきた戦友のようで、夫婦のようでもある二人なのである。


別に映像として彼女たちのそれまでの思い出が流れるわけではないが、眼裏にそれらが次々と浮かび上がってくるほど、思いが交差するようなラストシーン。彼女たちの出会いがあってこそのそれぞれの人生であったと思える一方で、消えることのない偏見とそれによる傷の深さをごまかすものではない結末にまた、目頭が熱くなった。
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