宇尾地米人

続・激突!/カージャックの宇尾地米人のレビュー・感想・評価

続・激突!/カージャック(1974年製作の映画)
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 スピルバーグといえばもうアメリカ代表みたいな映画監督、映画製作者。娯楽映画の一番星のような人なんですが、この人が25歳のとき『激突!』を監督して、3年後28歳のときにこの映画を完成させました。これが最高傑作ですね。そしてこの題名。外国映画の日本語題だと『サスペリア2』とか『バス男』とかありましたけど、それらと並ぶような酷さですよ。『THE SUGARLAND EXPRESS』というと"シュガーランド急行"といいますか、ですが列車ではなく、車で走って走って、突っ走っていく話。シュガーランドはテキサス州の都市で、アメリカ内外から住みよい土地として注目されるところなんですね。地球上で最も広くて偉大で暑くて乾燥しているところ。そういった場所を舞台にしたところがこの映画、この事件映画のポイントです。最初にテロップが出ますが、この作品は1969年にテキサスで実際に起きた事件を基にして製作されています。

 若い女房がゴールディ・ホーン。夫のウィリアム・アザートンを刑務所から連れ出して、里子に出された息子を取り戻そうとシュガーランドへ向かいます。車を盗んで乗り逃げして突っ走ったりして、警察に追いかけられます。それがひとりの巡査だった。マイケル・サックス扮する巡査。夫婦は車を事故らせダメにしますと、近寄ってきた巡査から二人がかりで銃を奪い、人質にした。夫婦はパトカーに乗り込んで、巡査に「自分たちをシュガーランドまで連れていけ」と脅迫する。巡査は仕方なく運転する。やがてこのカージャック事件が警察に知られ、マスコミにも知られ、追われ始める。ベン・ジョンソンの警部がやって来て、犯人夫婦とも話し始めます。「シュガーランドへ行きたいだけだ。追って来るな」「すまんがこれも仕事なんだ」警部は人質の巡査を助けたい。夫婦はシュガーランドで息子を取り戻したい。巡査はとりあえず生き延びたい。さあ走って走ってどんどん行く。追って追って追いかける。どうなっていくか。

 当時のスピルバーグは28歳で最高のヒューマンタッチを滾らせました。カージャック夫婦はもう後に引けないくらい罪深くなって、ピンチピンチが続いていく先行き不安。しかし息子という希望があるあたり。巡査も災難でヘトヘトになっていくも、段々と夫婦の事情や人柄を知っていく。警部は最初、狙撃させるつもりだったけれども、死者を出さずに解決したい。考えて考えてどうしてやるか。実話が基であるだけに、こういった事件中の思惑を重んじて描いています。ここが見どころです。ラストについては触れられませんが、忘れられない場面です。『スティング』を製作したザナック&ブラウン、『脱出』の撮影スィグモンド、『未知との遭遇』の脚本マシュー・ロビンス、劇伴はお馴染みのジョン・ウィリアムズと流石の一流スタッフです。これはスピルバーグの凄まじい映画キャリアでも埋もれてほしくない大事な一作です。
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