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続・激突!/カージャックのくりふのレビュー・感想・評価

続・激突!/カージャック(1974年製作の映画)
3.5
【パトカーは続くよどこまでも】

U-NEXTにて。スピルバーグの劇場用映画第一作を、久しぶりに再見、その巧さに改めて驚く。さすがに、脚本の残念感は幾つもある一方、根っから、映像で的確に語ることをわかっているんだよね。

子供の頃、邦題と原題の違いを気にするようになったのは本作辺りだったか?脱獄犯が数珠つなぎで続くパトカーを引き連れ、シュガーランドに向かう様子が列車のようだから“Sugarland Express”…だというのは、淀川さんか誰かの説だっけ?…当時は目からウロコだったが。

しかし、映像語りの巧さに呑まれても、終わってみればやっぱ、人間掘り込みが浅くて余韻が残らない。映画なんてそんなもんでしょ、と言われたらそれまでだけど。

スピ監督は自身のトラウマもあり、どんな事態でも子供を取り戻そうとする親の姿を描きたかったらしいが、ゴールディ・ホーン演じる母親からは愛情というより我儘、さらにサイコパスな印象さえ受ける。

父親ウィリアム・アザートンの方は、サイコ妻に巻き込まれた形で同情してしまうが…この夫婦が、他に選択肢なく、愛情からギリギリの行動をしたとは感じられない。

実話が元だが、現実の母親アイラ・ファー・デントは、子供をネグレクトし遊び歩いていたから取り上げられたそう。すると逆ギレして映画のような行動に出たらしく、実は実話に忠実なのね。www

彼らを追う警部ベン・ジョンソンの滋味も凄いんだけど、躊躇していた“殺し”に関する決断をする時、その葛藤が伝わってこない。最後でするっと、物語進行の奴隷に堕ちるようだ。

そう、人物がペラく映ってしまうのは、娯楽映画としての手際がよいことも大きいのだろうけど。

謎のタンクローリーや巨大鮫との死闘などが物語の幹で、そこに人物を盛る構図だとスピは塩梅よいのに本作の場合、幹は人そのものでしょう。となるとこの頃から、こういうのは不得手だったんだなあと。

カージャックが順調にw進む辺りまではユーモアも効いているし、惹き込まれる。が、物語が深刻方面に向かうほどに、展開が荒唐無稽になってゆく。見ていて、若気の至りだなあとは思うけど…。

てーか単純に、始めから根っから“残虐番長”で、人間をどこか、冷ややかにしか描けないってだけかも?

音楽のジョン・ウィリアムズ、撮影のヴィルモス・スィグモンドと初タッグを組んだことは大きかったでしょうね。この後、特に音楽は重要なパートナーとなるわけで。

ふと思ったが、『フェイブルマンズ』でミシェル・ウィリアムズが演じた変人ママの、原型はこのゴールディ・ママにあったような気がしますね。

<2024.4.4記>
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