とうじ

SAFEのとうじのレビュー・感想・評価

SAFE(1995年製作の映画)
4.0
良い。
原因不明の突発的なアレルギー発作により、社会に全然馴染めなくなった専業主婦を描く映画。

社会に何を見出すかは、自分の内側の反映であり、自分の内側は、社会によって形作られる。では、本作で描かれる社会とはなんなのか。
それは、現在もなんら変わっていない、金のために人々を定型に押し固めていき、ゆっくりとではあるが確実に人を人でなくしていく資本主義社会である。
そのような社会に対して、主人公の思考よりも先に肉体が拒絶し出す、という発想が面白い。

結果的に、外側の社会を変えるのは無理なので自分の内側を変えようとする、という着地点になるのは妥当。主人公が鏡に向かって「あなたのことが大好き」と何度も何度も唱え続けるラストシーンは胸が痛む。

しかし、何よりも悲愴的なのはそのような着地が、カルト宗教のコミューンのようなところでしか許されないということである。そして、そのようなカルト宗教も結局は工場なんかと同じように、人々を金としか見ていないということはいうまでもなく、それを一番極端に、必死に隠そうとしている商業だからこそ、主人公は束の間の安穏の場を見出せているというところが、皮肉が効いている。
とうじ

とうじ