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地上最大の脱出作戦のHKのレビュー・感想・評価

地上最大の脱出作戦(1966年製作の映画)
4.0
「降伏するか?」
「喜んで!」
「じゃあ一緒にお祭りだ!」

邦題だけ見ると本格戦争モノっぽいですが、ブレイク・エドワーズ監督のコメディです。
主役のジェームズ・コバーン(当時38歳)とエドワーズ監督が組んだ2本のうちの1本。
間違いなく第二次大戦の戦争モノなんですが、戦死者ゼロの派手な戦闘シーンが秀逸です。
なぜ戦闘中に誰も死なないのかというと・・・戦争ごっこだから。

シチリア半島のバレルノの村で仲良くなったアメリカ軍とイタリア軍は、偵察機が来る時だけ空砲を撃ちながら戦争しているフリをします。
撃たれて派手にキリキリ舞をして倒れる兵士、それを観て拍手する村の娼館のお姐さんたち、お姐さんたちに手を振る死体(?)、真面目に死ねと笛を吹いて注意するコバーン。

しかしおバカコメディと侮るなかれ。これこそ本当の戦争(=殺し合い)なんてバカバカしくてやってられるかという裏返しの反戦表現。
原題は“What Did You Do in the War, Daddy?”(パパは戦争中は何してたの?)
エドワーズ監督が実際に息子から言われた言葉だとか。

脚本はB・エドワーズ監督のピンクパンサーシリーズの最高傑作『暗闇でドッキリ!』の脚本も書いているウィリアム・ピーター・ブラッティ。なんとあの『エクソシスト』の原作者。
音楽はエドワーズ作品ではお馴染みのヘンリー・マンシーニ。

本作はイーストウッド主演の『戦略大作戦』やスピルバーグ監督の『1941』など後の戦争コメディにも影響を与えており、将軍役のキャロル・オコナーは『戦略~』でもほぼ同じ役。共演者が曲者ぞろいで主役(コバーン)が食われ気味なところまで似ています。

ただ、今回観直して惜しいと思ったのは終盤が少しダレ気味。
コメディ作品はとくに昔のTV枠の短縮版の方がテンポよく感じることが多い気がします。またTV版は吹替の力も絶大。
今回は久々にクリスチャン少尉のコバーン(小林清志)、キャッシュ大尉(広川太一郎)、オッポ大尉(家弓家正)らの日本語吹替で鑑賞。

あともうひとつ惜しい点はドイツ軍だけやっぱり完全な悪者だったこと。
ここをもう一捻りすれば『まぼろしの市街戦』と並ぶ反戦コメディの傑作(?)になったかも。

コバーンは代表作『戦争のはらわた』のドイツ兵(シュタイナー伍長)がはまり役なので、むしろ米軍服に違和感アリ(?)。そういえばコバーンはTVの『コンバット!』でもドイツ兵の役(スパイですが)をやってましたっけ。
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