horahuki

汚れなき瞳の中にのhorahukiのレビュー・感想・評価

汚れなき瞳の中に(1988年製作の映画)
3.8
過去を燃やし未来へ!

10月はハロウィン②

1962年ハロウィンの夜、友達の悪戯でロッカールームに閉じ込められたフランキー少年は、目の前で少女が殺害される幻を見る。少女の「ママを探して!」の声が忘れられない彼は、手がかりを探すうちに連続児童殺人事件に巻き込まれていく…というファンタジーホラー。

売れっ子怪奇作家が20年ぶりに帰ってきた故郷で、幼い頃に経験した奇妙な出来事を思い返しナラティブに綴るノスタルジー溢れる作品。主人公が怪奇作家のジュブナイルという点はスティーブンキングを思い出さずにいられないし、子供たちが自転車で駆けるシーンを含めてアンブリンからの影響も強そう。

まず思い出すのは楽しげな記憶。活気のある街の人々の営みの中をドラキュラのコスプレで籠にカボチャを入れて自転車を走らせる。車が通る道にも平気で飛び出し全力疾走する子ども時代特有の全能感と開放感。こういうの堪らなく好きだわ👍そして、そこに舞う枯れ葉がノスタルジーだけでなく何かが始まる違和感までも上乗せし、ついには凄惨な記憶が蘇り始める。

少女が現れてからの幻想的な雰囲気がめちゃくちゃ良い!一人称で過去の記憶を語る主観での物語であるため、そのことを意識した現実離れした映像が多く、窓から差し込む光ひとつとってもジャケ画像のように幻想的に描かれている。ゴシックホラーとは違った趣の濃い霧を多用したり、絵画的背景美術だったりと幻想感を徹底しているのがわかる。

というのにも理由があって、少女の幻が本当に起こったことなのか彼自身が生み出した幻想なのかを恐らく本人自身が自覚していない。それゆえに曖昧な記憶を掘り起こすためのファンタジーな空気感にこだわっているんやろね。この少女が連続児童殺害事件の最初の被害者なのだけど、その母親を探す彼の行動は、母親を亡くした自身を少女と重ねての行動でもあり、未だ引きずる母親の幻影からの脱却という意図が見えてくる。

だから少女は、彼が過去を乗り越え心的成長をする過程で、彼自身の精神的な原動力として生み出した幻ではないかという線が濃厚で、実際にこの少女が幻として登場しなかったとしても物語的には成立してしまうこともそれを裏付けているように思う。もちろん映画としては絶対的に不可欠な存在なのだけど。

死んだ母親はもう戻らないという時の不可逆性を演出する風車が何度も印象的に登場し、高速で回転するそれが彼の「過去を燃やす」という次のステップへの成長を少し突き放すかのように後押しするのが暖かさだけでなく厳しさまでも感じさせるのも凄く良かったし、黒人差別の根深さとか児童殺人とか世相を反映したのであろう社会派な一面も盛り込んでるのも👍

吹替だと声で犯人がすぐわかるらしいので字幕で見て良かった😂でも、VHSで良くあることではあるのだけど、字幕が意図的につけられてない箇所が多くてそこはちょっと気になった…😭これNoハロウィンじゃないかとビビってたやつだったけど、Yesハロウィンでとりあえず一安心🤣というか良く見たらVHSのジャケ裏にハロウィンって書いてたわ笑
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